基礎・全般

10 ワクワクの方向と量

昔、行商の旅人が砂漠と海に挟まれた古い都を訪れたときのことです。
何か面白いものはないかとバザールを歩き回っていました。

歩き疲れた頃、街の外れに古めかしい骨董品屋がありました。
胡散臭い雰囲気が漂っています。
店の奥に座っていた立派なヒゲの主人がギロリと一瞥しますが、また読書に戻りました。

古い壺、ランプ、時計、置物、古地図、何の用途か分からない道具類。
どれもいわくありげですが、どれもガラクタに見えます。

ふと古めかしいものが目に入りました。木製の枠で守られたガラス玉の中で針が萎びたように下を向いています。
方位磁石にしてはNとSの表記がありません。

「何ですか、これ?」と旅人は思わず聞いていました。
「お~、さすがお目が高い」と言って主人は白い歯を見せます。
聞くと遠い昔に帆船の船長が南海の孤島で見つけたらしいのですが、磁北を指す訳ではなく、使い方の言い伝えも長い歴史の中で風化してしまったと答えました。

「じゃ、ただの飾り物ってことですか」
「とんでもない」と主人はムッとしながら言いました。「このコンパスは宝の地図の代わりになると言われているのですぞ。使いこなした者には巨万の富がもたらされると」。

すったもんだの交渉の末、旅人はやっと半分に値切って買いました。
「やれやれ、これで当分パンと水だけだ」とボヤきながらも、顔は紅潮しています。
見ると針が少しだけ上を向いていました。でも方向は定まらず、まったくもって適当です。
「これじゃあな」と旅人がガッカリすると針も萎びてしまいました。

数週間後、行商の商品をほぼ完売し、旅立つ日が来ました。
北は海、南は砂漠。東は来た道、西はまだ見ぬ道。東西どちらに進もうかと考えていたら、方位磁石を思い出しました。

「どっちがいいかな?」と聞くと、方位磁石はいきなりシャキッとして西を指します。
旅人は嫌そうな顔になります。
情報がなく、未開の土地に等しいのです。どんな部族が治めているか知らないし、命がいくつあっても足りない気がします。

方位磁石は下向きですが、まったくブレずに西を指しています。
どんなに体の向きを変えても、西を指します。
「分かった、分かったよ」と言うと、旅人はなぜかワクワクしました。

歩きだしてしばらくすると方位磁石の針が微かに上向きになっています。
旅人は、へ~と呟きました。

旅は順調なことばかりではありません。
嫌な想いや苦労をして機嫌が悪くなると方位磁石はすぐに萎びて、方位が定まらなくなりました。
不安、恐れ、そして一番よくないのが方位磁石を疑うことでした。

それが分かってからは、行く先々で商売が大当たりしました。
旅人は最終的に方位磁石を使わなくても分かるようになりました。

やがて莫大な富を築いて故郷に錦を飾り、いつまでも幸せに暮らしました。

(おしまい)

 



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