お金・金運

16 もっと真剣に願ってよ 後編

2021年4月16日

前編はコチラ

「で、何に使うんだい?」とお婆さんが言いました。
「え?」と言って青年は考えます。「車とか家とか買って、海外旅行とか温泉に行って、美味しいものたらふく食って」
「その後は?」
「仕事を辞めて、のんびりと」

「怠け者じゃないか」
「最近ではセミリタイヤって言うんすよ」
「知らない言葉を使うんじゃないよ。要はグウタラだろ。ダメだね」
「は? なんでよ。願いを叶えるって」
「悪い願いはダメだよ。ダメ男になるの分かってて叶えるなんざ~、筋が通らねえってもんだ」。お婆さんは腕まくりして肘を前に突き出します。「この桜吹雪が」
「いや、無いでしょ」。

お婆さんは素に戻ります。「もう一度聞くけど、なぜお金持ちなんだい? 楽したいってのはダメよ」。
青年は考えます。老後の安心と言えば、若いくせにと言われそうです。「あ、彼女が欲しいっす。嫁さんも」
「なら、最初からそう願えばいいじゃないか」
「最近はある程度お金がないと彼女も結婚もできないんで」
「本当にそうかい?」
「そうっすよ」。
お婆さんは覆いかぶさるように大きくなります。「この時代、お金持ち以外は結婚してないのかい?」
「……いや、そういう訳じゃ」。
お婆さんは元の大きさに戻ります。「宿題だね。お前さんには理由がない。真剣味がないんだよ」。

青年が考え込んでいると、お婆さんは行灯に戻ろうとしました。「ちょっ待って。お金は必要なんすよ。今は派遣でケガや病気したら即アウトで、貯金もないし」
「分かったよ。幾らあればいいんだい」
「とりあえず百万あれば」
「一番目の願いを使うんだね?」
「はい、お願いしやす」。青年が正座します。

「で、代わりに何を差し出すんだい?」
「はい?」
「お前さんは何を犠牲にするのかって聞いてるんだよ。まさかタダで貰えるたぁ~思ってないだろうねぇ」
「え、お金を取るの?」
「なわけないだろ。違うよ。お前さんはどんな行動や努力するのかって聞いてるの」。

青年はぶつぶつ呟きます。「んだよ、ケチくせえな。こういうのって普通ササッと出すだろ」
「あんだって?」
「いや、何でもないです」
「ケチ臭いって言った?」
「あ、言ってないです。はい、すいません」

「ったく最近の若いやつは楽ば~っかり考えて。で、何? 差し出すのは」
「え~っと」と言って、青年は考えます。「あ、正社員になるために資格の勉強します」
「勉強だけ?」
「いや、資格を取ります」
「絶対だね」
「え~っと、できれば」。

お婆さんは行灯に帰ろうとします。「ちょっ、待ってってば」
「男に二言はあるのかね」
「ないっす。必ず取ります」
「よ~し、よく言った。それでは一番目の願いを叶えやしょう~」。お婆さんが両手を合わせます。

「あ、その前に」とお婆さんが言います。
青年はコケそうになります。「なんだよ~」
「言っとくけど、前払いだからね。これに見合う男になるんだよ」
「合点承知しやした」
「フフッ、分かってきたじゃないか」。お婆さんが微笑んで、両手を合わせます。呪文を唱えると煙が出て、部屋中に広がる竜巻になりました。

やがて落ち着き、青年が目を開けると金色の小判が十枚ずつ帯封で巻かれて十個、畳の上にありました。
「はい、百両。仕事は今まで通り頑張って、これは大事に使うんだよ」と言って、お婆さんは行灯の中に戻りました。

薄暗いアパートの部屋が急に明るくなりました。青年は飛び上がって喜びます。
ふと気づいてスマホで値段を調べたら、一枚約十万円でした。全部なら一千万円を超えています。
「チックショー、千両箱にしとけばよかった~」と言って頭を掻きむしります。「ま、いっか。1億あったら絶対勉強しねえし」。

青年は部屋の隅に積んでいた資格試験の参考書を手に取りました。表紙に息を吹きかけると埃が舞い上がります。
手を扇子みたいにして埃を払うと、むせたのか目尻に涙が浮かびます。
「婆さん、ありがとな。やるよ、俺」。
青年は参考書を開き、勉強を始めました。

(おしまい)

 



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