仕事

21 ツイてない証拠を集めるな

ある夕方、森の中の繁華街でネクタイを締めたカナブンが両肩を落として歩いていました。うつろな目に、どんよりした表情、生気もありません。

向こうからコガネムシが歩いてきました。カナブンは気後れしましたが、話しかけることにしました。
「先輩、お久しぶりです」
「お、バリバリ売ってる?」。コガネムシは高級そうなゴツイ腕時計をして、ニカっと笑います。
「いやぁ……」。カナブンは苦笑します。
「どうしたの?」
「営業成績が……」
「前はけっこう売ってたじゃん」
「先輩が独立した後、上司が変わって圧がすごくて、それから急降下しちゃって」
「じゃ、上司のせい?」
「いや、そういう訳じゃ」。カナブンは慌てて否定します。「でも実際、客の引きが悪くなったんです。質が悪いというか、予算がないとか、クレーマーっぽいのとか、冷やかし客も増えて」

「ふ~ん、ところで今、ツイてると思う?」
「いや~、とてもそうは」
「そう思ってると、さらにそうなるよ」
「運も実力のうちってよく言われるんすけど」
「運こそ実力だよ。商品知識とか営業スキルなんかは二の次、三の次。あって当たり前」

「どうしたら、ツキを上げられますか?」
「簡単だよ、ツイてるって言うんだよ」
「え、でも」
「まずその否定語を止めようよ。いや、でも、しかし」
「あ、すみません」
「ツイてるって言ってみて、今」
「今ですか?」
「止める?」
「いえ、あ、やります。ツイてる……」
「もっと真剣に心を込めて言うんだよ。これから毎日、何十回も」
「はぁ」。
コガネムシの眉間がピクッと動きます。「ツイてない理由を外に求めない。自分が引き寄せたんだよ。そしてツイてない証拠集めは止める」
「はい……」
「これからはツイてる証拠集めをする。些細なことでも、すぐツイてると言う」
「了解っす」

「ま、ここまではよく言われることなんだけど」と言って、コガネムシが微笑みます。「コツは、ツイてないことが起きたときもツイてるって言うんだよ」
「え?」
「嫌なことが起きたときこそ、ツイてるって言うの」
「はぁ……」
「あのさ、聞く気ある?」
「あります、あります」
「ひょっとして、うっせえわと思ってる?」
「いえ、先輩が思うより不健康です。追い込まれてるんで」
「ま、いいや。ツイてないときにツイてないと言えば、それで終わりなんだけど、ツイてると言えば、後で振り返ったときに、よかった~ってなるから」
「へ~、そうなんですか」
「へ~じゃねえよ」
「あ、すみません」。

コガネムシが笑います。「それとオマケ。会社に成績の棒グラフあるだろ。ノルマ達成した自分の場所を指差してニカッと笑顔でガッツポーズしてるのを自撮りして」
「今、スカスカなんですけど」
「大丈夫。その画像を加工して、棒グラフをノルマ達成のところまで伸ばす」
「あ~、イメトレですね」
「その画像を毎晩見て、本当に達成した気分に浸ってワクワクしながら寝る」
「あ、それならできます」
「いつやる?」
「えーっと今週中には」
「……」
「あ、すみません、今から会社に戻るんで撮ります」
「分かってきたじゃん」。コガネムシが笑います。

「ノルマ達成したら、一杯おごらせてください」とカナブンが言いました。
「達成したら、じゃねえよ。達成するのかしないのか、どっち?」
「必ず達成します」
「よし、そのときは俺が奢ってやるよ」。
コガネムシもカナブンも笑顔になりました。
「先輩、あざ~す。また連絡しま~す」。カナブンは小走りで去っていきました。

(おしまい)

 



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