恋愛・婚活

33 まず決めなさい 前編

2021年5月22日

若い女性がぼんやりと立っていました。
霧のかかった視界が少し晴れて、建物の中の大きな空間にいます。空港の入国審査場のようですが、他には誰もいません。

よく見ると審査カウンターにお婆さんが座っています。
若い女性は少し安堵して歩み寄り「こんにちは」と話しかけました。
お婆さんは老眼鏡越しにジロリと睨むと「パスポート」と言いました。
若い女性は慌てて探しますが、パスポートどころか荷物を全く持っていません。しかもスウェットの上下で裸足です。
「あの、何も持ってないんですけど。名前とか生年月日を言えばいいですか」
「パスポート無いんだね」
「あ、はい」
「じゃあ審査、厳し目になるよ」
「はい……」

「入国の目的は?」
「サ、サイトシーイング?」
「私に聞いてどうするんだい」と言ってお婆さんは笑いかけて、慌てて笑顔を引っ込めます。「ココは観光で来るところじゃないよ。ほら、見てごらん」。
お婆さんが指したドアの上には『潜在意識入口』と書かれています。
「願いがあるんだろ」
「あ、そうだった。結婚だ」。若い女性は自分の口から急に願いが出てきたので戸惑いますが、確かに最近の一番の悩みは上手くいかない婚活でした。

「ふむ。で、どの程度、結婚したいんだい?」
「え~っと、そうですね。いい人がいたら結婚したいです」
「全然ダメ、却下」
「いや、ちょっ待って」
「話になんないよ」
「どこがダメなんですか? 皆も言ってるし」
「いい人がいたら結婚したい。では、いい人がいなかったら?」
「結婚しません。ていうか、できません」
「お前さん、結婚したいの、したくないの?」
「結婚したいです。いい人がいたら」
「ダメ、帰りな」と言ってお婆さんは手の甲を向けて、ヒラヒラとさせます。
「え~、なんで~」

「あのね、大学の受験生で考えてごらんよ。いい大学あったら入りたいなんて言ってる子が受かると思う?」
「……」
「プロのピアニストや野球選手になりたい人が、いいプロの口があったら入りたいなんて言うかい? そういう人たちは何て言うと思う?」
「絶対入ってやる、とか?」
「こじ開けてでも入ってやるって常日頃から思ってるんだよ。で、聞くけどお前さん、決めたのかい? 結婚するって」
「え、結婚はしたいです」
「したいじゃないよ、するって決めたかどうかだよ」
「でも、まだ相手もいないし……」
「そうじゃなくて、意思とか覚悟を聞いてるの」
「う~ん。うまくイメージできないです」
「もどかしいねぇ。この下り、あと二十分は続きそうだね」と言って、お婆さんが苦笑します。

「決めるという言葉の意味を説明してごらんよ」
「え~っと、ぼんやりしてたり、未確定のことをハッキリさせる、かな?」と若い女性が言いました。
「複数のものから一つを選んで、動かさない、変えないって意味もあるね」
「はい」
「じゃ、もう一度聞くけど、いい人がいたら結婚したいというのは、結婚するって決めたの、決めてないの?」
「う……」

「分かったら、出直しておいで」
「待ってください」。若い女性の声が少し大きくなります。「本当に結婚したいんです。それは間違いないんです」
「ふ~ん」
「どうしたら、いいんですか」
「ココは審査する所で、教える所じゃないよ」
「え~」
「でも、まぁ聞きたいって頼まれたら、教えなくもないけどねぇ」とお婆さんは遠くを見ながら呟きます。
「教えてください」。若い女性はカウンターに身を乗り出します。

(つづく)
後編はコチラ

 

 



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