お金・金運

45 副収入、3万円ください

2021年7月2日

三十過ぎのある女性がぼんやりと立っていました。
霧のかかった視界が少し晴れて、建物の中の大きな空間にいます。空港の入国審査場のようですが、他には誰もいません。
よく見ると審査カウンターにお婆さんが座っています。女性は歩み寄りました。

「こんにちは」
「パスポート」とお婆さんは言います。
女性は慌てて探しますが、パスポートどころか荷物を全く持たず、しかも裸足です。「あの、ココは……」。
お婆さんが指したドアの上には『潜在意識入口』と書かれています。「願いがあるんだろ」
「あ、そうだ。副収入だ」
「どの程度、欲しいんだい?」
「……月3万もあれば助かるんですけど」
「随分つましいじゃないか」
「いや、本当に切実で。確実に手に入れたい金額なんです」

「で、お前さんは何か行動してるの?」
「実は私シングルマザーで、子供が小さくて平日のダブルワークは難しいんです。休日に預かってくれる所を探して働いたこともありましたけど、体を壊しそうになって、これじゃあ本末転倒だなって」
「他には?」
「ホームページ用の文章を書くウェブライターの仕事をしたり、あとフリーマーケットアプリで手作り品を売ったりもしました。でも全然お金にならなくて、時給換算したら悲しくなって……」
「じゃあ、今は?」
「昼間の仕事の他はとくに……。探してはいるんだけど、家でやるとなると初期費用が必要なのとか、資格商法みたいなのとかが多くて……」
「気をつけなさいよ、本当に」とお婆さんが言います。

「ところでお前さん、行政の支援制度なんかは利用しているの?」
「いちおう調べてますけど」
「積極的には教えてくれないらしいから、しっかり調べるんだよ。あとシングルマザー世帯に食料を無料で配ってる民間のボランティア的な団体もあるらしいね」
「無料で?」
「うん。だから根気よくネットで探すといいよ」
「やってみます」

「それはいいとして」とお婆さんが言います。「頑張ってるみたいだから、通してあげたいけどねぇ。お前さん、今は副収入を欲しいという状態かね? それとも受け取ると決めた状態かね」
「欲しいです」
「残念だけど、それだと欲しいという状態を引き寄せてしまうんだよ。だからずっと欲しいまま」
「そんなの困ります」
「分かるよ。でもそういうものなんだ」
「なんか方法ないですか?」
「ココは審査するところで教える所じゃないの」
「そこを何とかお願いします」

「ま、いいけど」と言って、お婆さんは背筋を伸ばします。「お前さんは勤めのダブルワークは難しいみたいだから、自営業的な方向で探したほうがいいかもね。それなら好きなことを追求しなさい。そしてお前さんにしかできないオリジナルを追求しなさい」
「オリジナル?」
「そう、替えがきかないこと。お前さんを指名して仕事をくれるとか、注文してくれるとか」
「う~ん……」
「替えがきくということは足元を見られるので安く叩かれるんだよ」
「あ~、分かります。ウェブライターのとき、そうでした」
「リピートオーダーをもらえる腕前になればいいんだけど」
「なかなかそこまでは」

「得意なこと、好きな分野で売上になりそうなのない?」
「フリマアプリで手作り品を売るのは好きでした。何よりお客さんが喜んでくれるのが嬉しくて」
「好きこそ物の上手なれだよ。追求して極めなさい」
「え~、でも……時間のわりに安くって」
「目先の利益を追求したら、そのうち資格商法みたいなのに引っかかるよ。急がば回れ。まずはリピートオーダーが来るくらいに腕を上げなさい。そうしたら、フリマアプリだけじゃなくて、色んな所で売りなさい。ネット上に自分のお店を持ちなさい。そのうち自分一人では生産が追いつかなくなるから、そうしたら下請けに出しなさい。今の時代、お金を出したら安い賃金でも内職してくれる人はいっぱいいるから。お前さんみたいに」
「え~、それって何だか会社みたいですね」
「そうだよ。自営業は起業するってことなんだから。お前さんがファンを掴んで、お前さんみたいに頑張ってるシングルマザーに仕事を振ってあげる立場になれたら素敵だと思わないかい?」
「何だか夢のようで……」

「やるの、やらないの?」
「う~ん、考えてみます」
「ダメ、却下。帰りな」
「分かりました。やります、やります」
「どの程度の期間、やるんだい?」
「とりあえず三ヵ月かな……」
「お前さんの好きってのは、その程度なの?」
「分かりました。何とかやりくりして、一年はやります」
「ホントかい?」
「大丈夫です。好きな分野なので」

「今はね、本当に大変な時期だと思うけど、子供は国の宝だからね。無理しないように頑張るんだよ」
「はい」と言って、女性は微笑みました。
お婆さんも笑顔になると辺りはぐるぐる渦を巻いて、霧に包まれ、やがて真っ白になりました。
遠くで鳴っていた目覚まし時計の音が近くになりました。

(おしまい)

 



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